離婚の際は、夫婦間の協議で離婚する協議離婚が日本では多くを占めています。
しかし、夫婦間の協議が整わないときは、裁判所を通じて離婚手続きを行います。
また、国際結婚のの夫婦で、相手の国が裁判離婚しか認めていないときは、夫婦間で協議ができていても、形だけ裁判所で離婚手続きをすることもあります。
裁判所を通じておこなう離婚手続きには、調停・裁判、審判の3つの手続きがあります。それぞれどのような手続きなのか詳しく説明します。
この記事の内容
1.調停離婚とは
調停離婚とは、正式名称を夫婦関係等調整調停といい、家庭裁判所に離婚の調停を申し立て調停委員によって進められる話しあいのことをいいます。
離婚の流れとして、通常は、夫婦間で話しあいの機会を持つでしょう。ですが、お互いの生活がすれ違っていたり、感情が高ぶっていたりする場合は、落ち着いて話し合うことができません。そこで、第三者である調停委員を交えた話しあいの場が持たれるのです。
調停離婚では、男女1人ずつの調停委員が、調停の申立人と相手方それぞれの主張や言い分を聞き取ります。この内容をもとに、調停期日に夫婦が家庭裁判所へ出向いて互いの意見を伝えます。お互いが離婚の条件に納得でき合意すれば調停が成立し、当事者立会いのもと合意した内容を確認します。
では、具体的な手続きの流れをご説明しましょう。
調停離婚の流れ【申立て】
夫婦間での話しあい(協議)がうまくいかなかった場合、調停離婚を家庭裁判所に申し立てます。
手続きに必要な条件を確認しておきましょう。
申立人
調停の申立ては、妻、夫それぞれがおこなえます。浮気など離婚に至る理由をもつ有責配偶者からの申し立ても可能です。
申立先
相手方の住所地にある家庭裁判所又は、夫婦が合意で定めた家庭裁判所
申立に必要となる費用
・収入印紙 1,200円分
・連絡用の郵便切手 約800円(裁判所によって料金が異なるため、申し立てを行う家庭裁判所に確認しましょう。)
・戸籍謄本取得費用 450円
・そのほか、請求ごとの費用 各1,200円(婚姻費用分担、財産分与、慰謝料、養育費など)
必要書類
・夫婦関係調整調停申立書とその写しを1通
・夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
・申立人の印鑑
・年金分割をおこなう場合は年金分割のための情報通知書(発行日から1年以内のもの)
・そのほか家庭裁判所が定める申立書書付票などの追加資料(裁判所によって異なる)
※離婚理由は法定原因に限られません
申立書を記入する際、申立ての理由を記入する欄があります。調停は裁判ではなく、あくまで夫婦間の合意による離婚を前提としています。
そのため、裁判上の離婚原因となる法定離婚原因はなくても離婚ができます。例えば、裁判離婚では性格の不一致による離婚は認められませんが、調停の場合は、性格の不一致による申立ても認められます。
【第一回調停期日】
□日程調整の連絡
調停の申し立てをすると、家庭裁判所から連絡が入り第一回調停期日の日程を相談します。
相手方との調整も完了すれば、第一回調停期日が決まり、2週間ほどで期日通知書が届きます。
たいていの場合、第一回調停期日は、申立てから1か月後くらいですが、東京や大阪といった都市部は案件も多いため、2か月かかる場合もあります。
□必要なもの
・期日通知書
・印鑑
・身分証明書(運転免許証や保険証、パスポートなど公的なもの)
・筆記用具
□当日の流れ
当日の所要時間は2~3時間となります。詳しい流れを確認しましょう。
1.家庭裁判所内の待合室にて待機
待合室は夫婦それぞれに準備されています。相手と顔を合わせる可能性も少ないので、安心して待機しましょう。
また、DVなどで絶対に顔を合わせたくないという場合は、配慮してもらえます。事前に調停員や裁判官に相談してください。
2.申立人の聞き取り
調停室へは申立人が先に呼び出されます。男女それぞれ1名の調停委員から、離婚のいきさつや離婚に対する意見の聞き取りが、約30分に渡りおこなわれます。
聞かれる内容は以下の通りですので、あらかじめ準備していきましょう。
・離婚理由
・婚姻生活の実態
・財産分与や年金分割、慰謝料
・子供がいる場合は親権や養育費
・離婚後の生活
3.相手方の聞き取り
申立人の聞き取りが終わると、相手方が調停室に呼び出され、聞き取りが始まります。
相手方にかかる時間も申立人と同じく、約30分です。
4.双方の調整
相手方の聞き取りが終わると、申立人は調停室から呼び出されます。
調停員から先ほど相手方が主張した事実や意見が伝えられ、また申立人に対して質問が投げかけられます。このような質疑が約30分続き、申立人は再び待合室に戻ります。
次に、相手方が調停室に呼び出され、約30分、申立人の意見をもとに質疑がおこなわれます。
【第二回調停期日以降】
実際には、話しあいがもつれるため、第一回期日で調停が成立するケースは稀です。そのため、1~2か月後に第二回期日が設けられます。
□当日の流れ
第一回期日と同様の流れで、申立人、相手方の順に聞き取りがされます。
第一回期日で伝えられなかった意見や事実があれば、伝えるようにしましょう。
当日は、申立人、相手方と相互に2回ずつ聞き取りがされます。
□第三回期日の設定
第二回期日でも意見が合わなければ、第三回期日が設けられます。
たいていのケースでは、第一回、第二回で収まることはなく、第三回、第四回と期日が設けられています。
調停委員は、なるべく早期の解決を図るのですが、相手の不協力や欠席などで期日が先送りになるケースが避けられません。
調停が長引くと半年以上に及ぶこともあります。体調を整えて長期戦を覚悟しておきましょう。
【調停に欠席する場合】
体調不良や家庭の事情などで、期日に出席できない場合は、家庭裁判所に連絡を入れます。
期日通知書に記載されている担当書記官に連絡を入れると、相手方への連絡などの手続きをおこなってくれます。連絡の際は、自分の調停の「事件番号」を伝えましょう。
【調停申し立ての取り下げ】
夫婦のやり直しが決まるなど、調停を続ける必要がなくなった場合、申立人は申し立ての取り下げができます。
円満調整(夫婦関係のやり直しを求めること)を希望するかどうかは、申立書に記載します。もちろん、当初は離婚を求めている場合でも円満調整に切り替えることは可能ですので、調停委員に気持ちを伝えましょう。
【調停の成立】
期日に相手方との話しあいがまとまると、調停が成立します。
その際、書記官によって調停調書が作られ、お互いが合意した内容が記載されます。
調停調書には、裁判の判決と同じ力があるため、当事者は記載内容を守らなければなりません。
【離婚届を提出】
調停が成立すれば、戸籍法にしたがって、10日以内に市区町村の役場に離婚届を提出します。
その際、調停調書謄本や戸籍謄本を添付書類として持参します。
調停調書謄本は郵便で受け取れますが、発行に時間がかかると調停成立から1~2週間かかる場合があり、届け出に間に合わない可能性があります。
市区町村によっては届け出が遅れると、過料と呼ばれる罰金が科せられることがあります。確実に入手したい場合は、裁判所に出向いて調停調書謄本を受け取りましょう。
離婚裁判とは
離婚裁判とは、調停がまとまらなかった場合に、開かれる裁判のことをいいます。
民法では、離婚の裁判をする際、「調停前置主義」というルールがあります。
調停前置主義とは、離婚裁判をするには、まず、調停をしなければならないということ。調停がまとまらず不成立だった場合にはじめて裁判ができるのです。
離婚裁判の流れ【訴えの提起】
離婚裁判は、家庭裁判所への訴状の提出で始まります。
□原告
原告は、夫、妻のそれぞれがおこなえます。
□訴状の提出先
夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所
別の家庭裁判所において離婚調停を試みた場合、調停を取り扱った家庭裁判所で扱われることもあります。
□訴えに必要となる費用
・収入印紙 約13,000円(訴えの内容によって異なるため、家庭裁判所に確認しましょう。)
・郵便切手 約7,000円(裁判所によって料金が異なるため、訴状を提出する家庭裁判所に確認しましょう。)
□訴えに必要な書類
・訴状 2部
・夫婦の戸籍謄本とコピー
・年金分割をおこなう場合は年金分割のための情報通知書(発行日から1年以内のもの)
・そのほか家庭裁判所が定める追加資料(裁判所によって異なる)
【第一回口頭弁論】
□日程調整の連絡
裁判所への訴え提起が認められると、原告、被告のもとに家庭裁判所から第一回口頭弁論期日の通知が届きます。
訴状の提出から約1か月後に第一回口頭弁論が開かれ、その後1か月ごとに弁論期日が設けられます。
□当日の流れ
裁判は法廷で進められ、主に以下の話し合いがもたれます。
1.争点整理
裁判官が訴状を読み上げて、離婚についてどのようなことで争いになっているのかを確認します。
被告の答弁書(訴状に対しての被告の意見)があれば、訴状に続いて読み上げられます。
2.原告、被告による証拠の提出
争点について証拠となる事実の主張や物の提出をおこないます
証拠は争う事実によって異なりますが、具体的には以下の通りです
・不貞行為
不倫相手との肉体関係の有無が分かる資料(ホテルへ入っていく写真や画像、メールなど)、探偵による調査報告書
・暴力行為
医師による診断書、暴力によって壊れた家財道具の写真など
・財産分与
預金通帳、不動産の登記簿謄本など
3.原告の主張に基づく事実の認定
原告と被告による証拠をもとに、裁判官は事実があったかどうかを判断します。
ただし、一回めの口頭弁論で決着がつくことは少なく、第二回口頭弁論へと続いていきます。
【第二回口頭弁論以降】
□当日の流れ
1.書評(準備書面の確認)
第一回口頭弁論の結果をもとに、原告、被告ともに準備書面を提出します。裁判官は準備書面の内容を確認します。
2.本人審問
書評をもとに、原告、被告への審問がおこなわれます。
このとき、事前に「陳述書」を準備しておくといいでしょう。陳述書には、離婚を決意するに至った理由や意見などを記載します。
本人審問はまず原告に向けて、原告の弁護士から、被告の弁護士から、裁判官からの質問の流れで進められます。
次に、被告に向けて、被告の弁護士から、原告の弁護士から、裁判からの質問で進められます。
3.証人尋問
原告や被告の主張事実に対して、証人がいる場合、裁判所へ呼び出されて証人尋問がおこなわれます。
【和解案の提示】
審問が繰り返された結果、和解が見込めそうな場合、裁判所は原告被告に対して、和解案を提示します。
原告と被告が内容に納得して和解すれば、和解調書が作られて裁判は終了します。
【判決】
原告と被告との間で和解できなかった場合、裁判所による判決が出ます。
離婚を認める判決が出て、被告が控訴しなければ判決は確定し、離婚が成立します。
【控訴】
判決内容に同意できない場合、裁判を起こした家庭裁判所を管轄する高等裁判所へ控訴をします。
高等裁判所の判決にも同意できない場合は、最高裁判所へ控訴をしますが、最高裁判所での判断は確定判決となり覆りません。
【離婚届を提出】
離婚判決が出れば、戸籍法にしたがって、10日以内に市区町村の役場に離婚届を提出します。
その際、判決謄本や判決確定証明書、戸籍謄本を添付書類として持参しましょう。
審判離婚とは
審判離婚とは、離婚調停が不成立に終わった場合に、当事者双方のための利益として認められるのであれば、家庭裁判所が離婚の審判を下せる手続きをいいます。
調停離婚や裁判離婚に比べると、割合は格段に少なく、多くの場合が裁判離婚へと移行しています。
審判離婚の流れ 職権による審判
審判離婚は、調停が不成立だったときに家庭裁判所の職権によって審判がおこなわれます。
□異議申し立て
夫婦である当事者は、審判内容に反対する場合、家庭裁判所に対して異議を申し立てることができます。
この異議申し立てが法律にのっとり行われれば、審判は効力を失います。
□異議がない場合
【審判の確定】
審判から2週間経過すると、異議がないものと扱われて、審判内容が確定します。
【離婚届の提出】
審判内容が確定すれば、戸籍法にしたがって、10日以内に市区町村の役場に離婚届を提出します。
その際、審判書の謄本や審判確定証明書、戸籍謄本を添付書類として持参しましょう。
まとめ
家庭裁判所がかかわる離婚手続きには、調停、裁判、審判があります。
調停は、調停委員立会いのもと話しあい、双方が合意すれば調停離婚が成立します。
裁判離婚は、調停がまとまらず不成立に終わった場合におこなわれます。
審判離婚は、調停が不成立におわったものの、離婚を認める場合に、家庭裁判所が職権によっておこないます。
手続きごとに期間や費用などの条件が変わります。事前にしっかりと確認しておきましょう。