シングルマザーの方のお話を聞いていると、経済的な不安を抱えている人は多いです。
離婚してシングルマザーになり、今後は子どもたちのことを一生懸命に考えて生きていきたいと思っても、
と感じることもあります。
経済的不安をかかえたシングルマザーのために公的な手当や支援策がいくつかあります。その公的な手当の代表が児童扶養手当です。
児童扶養手当は、公的な手当の中でも金額が大きいので、母子家庭にとっては家計の大きな助けになります。
しかし、児童扶養手当は、母子家庭であれば自動でもらえるというわけではありませんし、誰でもいつまでももらえるものでもありません。
ここでは、母子家庭が受け取れる児童扶養手当の金額や条件、申請手続きについて説明します。
この記事の内容
児童扶養手当とは
児童扶養手当は、母子家庭の生活の安定を支えるための国の制度です。国の制度なので、住んでいる地域に関係なく条件に合えば受け取ることができます。
児童扶養手当は、離婚や死別、未婚の母などの母子家庭(父子家庭も)に支給されます。
児童扶養手当の対象になる児童
児童扶養手当の対象になる子どもの条件は次のとおりです。
- 父母が婚姻を解消した児童
- 父(母)が死亡した児童
- 父(母)が重度の障害の状態にある児童
- 父(母)の生死が不明な児童
- 父(母)に1年以上遺棄されている児童
- 父(母)が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
- 父(母)が引き続き1年以上拘禁されている児童
- 未婚の母の児童
- 母が児童を懐胎した当時の事情が不明である児童
児童扶養手当を受けられない人
児童扶養手当の対象になる子どもでも、児童扶養手当を受け取れないことがあります。
- 父(母)が婚姻しているとき(内縁関係、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある時を含む)
- 児童や父(母)が日本国内に住んでいないとき
- 児童が里親に委託されたり、児童福祉施設等に入所しているとき
- 請求者が母の場合、児童が父と生計を同じくしているとき(父障害相当の場合を除く)
- 請求者が父の場合、児童が母と生計を同じくしているとき(母障害相当の場合を除く)
シングルマザーがが再婚して母子家庭ではなくなったときや彼氏ができて事実婚状態になったときは、児童扶養手当を受け取れなくなります。
児童扶養手当の所得制限
児童扶養手当を受給するには、所得の制限があります。児童扶養手当の所得制限額は、子どもの人数に応じた所得の額で判断します。
扶養親族の数 | シングルマザー本人の所得制限限度額 | 扶養義務者等の所得 | |
全部支給 | 一部支給 | ||
0人 | 490,000円 | 1,920,000円 | 2,360,000円 |
1人 | 870,000円 | 2,300,000円 | 2,740,000円 |
2人 | 1,250,000円 | 2,680,000円 | 3,120,000円 |
3人 | 1,630,000円 | 3,060,000円 | 3,500,000円 |
4人 | 2,010,000円 | 3,440,000円 | 3,880,000円 |
- シングルマザーの所得の額が全部支給の金額以下であれば児童扶養手当を満額受け取ることができます。
- シングルマザーの所得の額が全部支給額を超えて一部支給額以下のときは、児童扶養手当が減額されます。
- シングルマザーの所得の額が一部支給の額を超えているときは、児童扶養手当を受け取ることができません。
- 両親と同居している場合で両親の所得が扶養義務者等の所得を超えているときは、児童扶養手当を受け取ることができません。
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児童扶養手当の所得とは
児童扶養手当の制限の基になるのは「所得」です。
所得とは、給与収入から給与所得控除を引いた後の金額です。源泉徴収票を会社から受け取りますよね。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」に書かれている金額が所得の額です。そこからさらに8万円(社会保険料相当額)を引いて計算します。
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扶養親族の数 | シングルマザー本人の給与収入 | 扶養義務者等の 給与収入 | |
全部支給 | 一部支給 | ||
0人 | 1,220,000円 | 3,114,000円 | 3,725,000円 |
1人 | 1,600,000円 | 3,650,000円 | 4,200,000円 |
2人 | 2,157,000円 | 4,125,000円 | 4,675,000円 |
3人 | 2,700,000円 | 4,600,000円 | 5,150,000円 |
4人 | 3,242,000円 | 5,075,000円 | 5,625,000円 |
児童扶養手当は前年の所得で計算されるので前年所得が多いと児童扶養手当を受け取れないこともあります。離婚したばかりでどんなに生活が苦しくなっても、必ずもらえるものだと思わずに、離婚前に状況を確認してください。
養育費を受け取っている場合の児童扶養手当
子供のお父さんから養育費を受け取っている場合、それを自己申告しなければなりません。そして、養育費の8割が所得として加算されます。
実家に住んでいる場合(扶養義務者)の児童扶養手当
離婚して実家に帰って両親と一緒に住む場合、両親が扶養義務者になります。住民票では別世帯になっていても、実際に両親と同居していれば扶養義務者です。
そして、扶養義務者の両親の所得が限度額を超えてしまうと、児童扶養手当を受け取ることができません。扶養義務者の所得が限度額以上であるときは、全部支給停止になります。
離婚後実家に帰って子どもの生活費や養育費をすべてあなたが負担していても、両親の所得次第で受給できない場合があるのは納得できないかもしれませんね。
彼氏と同居している場合の児童扶養手当
シングルマザーが彼氏と同居している場合、児童扶養手当を受け取れない可能性があります。
「母が婚姻しているとき」は児童扶養手当を受け取れないと法律で決められています。この「母の婚姻」には、正式に結婚しているときだけではなくて、正式に結婚していなくても結婚しているのと同じ関係にあるとき(事実婚)を含むからです。
つまり、彼氏との同居が事実婚とみなされると、児童扶養手当を受け取ることができなくなります。
事実婚を隠して児童扶養手当を受け取ると、不正受給になるので気をつけましょう。
児童扶養手当はいつからもらえる?何歳までもらえる?
児童扶養手当は、母子家庭だったら自動で受け取れるわけではありません。また、離婚して母子家庭になったときから受け取れるわけでもありません。
児童扶養手当を受け取るには、きちんと申請しないといけないので早め早めに手続きしてくださいね。
児童扶養手当はいつから受け取れる?
児童扶養手当が受け取れるのは、申請した月の翌月分からです。
児童扶養手当は申請しないと受け取れません。母子家庭になったときまでさかのぼって受け取ることもできません。
例えば、4月に児童扶養手当の申請をすると、5月分から受け取れるってことです。
ですから、月末にバタバタと離婚や引っ越しをして、いろんな届出や児童扶養手当の申請が翌月になってしまうと、1か月受け取るのが遅くなってしまいます。離婚で忙しくても児童扶養手当の申請は忘れず早くするようにしましょう。
児童扶養手当はいつまで受け取れる?
児童扶養手当を受け取れなくなるのは、次のようなときです。
- 児童扶養手当を受け取る資格がなくなったとき
- 子どもが一定の年齢になったとき
児童扶養手当を受け取る資格がなくなったときとは、先に説明した「児童扶養手当を受けられない人」に該当することになったときです。典型的なのは、シングルマザーが再婚したときです。あとは、所得が制限を超えたときも翌年度から児童扶養手当を受け取れなくなります。
また、児童扶養手当はいつまでも受け取れるわけではなく、子どもが18歳になったあとの3月31日を過ぎると、その子の分は受給できなくなります。わかりやすく言うと、子どもが高校を卒業するとその子の分は児童扶養手当を受け取れません。
児童扶養手当の金額
平成31年4月からの児童扶養手当の額
児童 | 全部支給 | 一部支給 |
第1子 | 42,910 | 42,900〜10,120 |
第2子 | 10,140 | 10,130〜5,070 |
第3子以降 | 6,080 | 6,070〜3,040 |
一部支給の場合は、所得額に応じて10円単位で細かく計算されます。
児童扶養手当の額は、その年度の間は変わりませんが、途中で所得の高い両親と同居した場合や、逆に別居した場合は変更されることもあるので、そういう場合は必ず担当の役所に問い合わせてください。
児童扶養手当の額が半分になる?
児童扶養手当の支給開始から5年たったときは、児童扶養手当の額の半分が支給停止になります。
Chouette
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いきなり半額になることがないように、対象者には事前にお知らせの文書が届きます。
そして、きちんと働いている場合、働いていなくても求職活動をしている場合や病気や怪我で働けない場合、そのことを届出すれば、これまでどおり児童扶養手当が全額支給されます。
児童扶養手当の半分が支給停止になった後でも、働き出したというような事情があれば届出は受け付けられて、また全額を受給することができます。
児童扶養手当の支給日
児童扶養手当は、毎年4月、8月、12月にその前の月までの分(4か月分)が振り込まれます。
Chouette
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児童扶養手当の申請手続き
児童扶養手当は住んでいる市区町村の窓口で申請の手続きをします。
児童扶養手当は申請した月の翌月分からの支給になります。さかのぼって支給されることはありませんので、離婚したらすぐに申請するようにしてください。
児童扶養手当申請の必要書類
児童扶養手当の申請に必要な書類は次のとおりです。
- 児童扶養手当認定請求書(申請する市区町村にあります)
- 戸籍謄本
- シングルマザー、子ども、扶養義務者の個人番号がわかるもの(マイナンバーカードなど)
- 預金通帳(児童扶養手当を振り込む口座)
- 年金手帳
ここに書いたのは基本的な書類なので、他にも健康保険証や家の賃貸借契約書などの書類が求められることもあります。手続きが一度で終わるように、事前に市区町村の窓口で確認してから行く方がいいですね。
毎年の現況届
児童扶養手当を受けている人は、引き続き児童扶養手当を受ける要件を確認するために、毎年8月1日の状況を記載した現況届を提出する必要があります。
郵送での届出はできません。実際に窓口に行くしかないのですが、かなり込み合うこともあるので、余裕を持って届出をしましょう。
まとめ
児童扶養手当は、シングルマザーの家計の安定に欠かすことができないものです。
しかし、児童扶養手当は母子家庭であれば自動で支給されるものではありません。前年の所得が高い場合や、離婚後実家に帰る場合、まとまった養育費を受け取る場合には、児童扶養手当が減額されたり全く支給されないこともあります。
離婚後に「こんなはずじゃなかった」ということがないように、離婚前に児童扶養手当をいくら受け取れるのか、どういう手続をする必要があるのかを確認しておくことをおすすめします。
また、児童扶養手当は申請しないと受け取れません。申請が遅くなっても、さかのぼっては支給されないので、離婚して母子家庭になったらすぐに児童扶養手当の申請手続きをしてください。