母子家庭はずるいと言われるけど本当?公的データを見てわかること

母子家庭はずるいと言われることもあるようですね。

試しにGoogleで「母子家庭」とだけ入れて検索して関連キーワードを見たら「母子家庭 ずるい」が先頭にありました。検索している人も多いようですね。

Googleの関連キーワード「母子家庭 ずるい」

ネット上のずるいという声を見てみると、母子家庭がずるいと言われるにはいくつか理由があるようです。

本当に母子家庭はずるいのでしょうか?

客観的なデータもみながら母子家庭がずるいかどうか見てみましょう。

母子家庭がずるいと言われる理由は

母子家庭がずるいと言われている理由として主に次のようなものがあります。

  • 勝手に離婚したのに各種手当や給付金をもらっている
  • 母子家庭が受け取れる手当・給付金が多い
  • 生活保護もらってる
  • 各種免除が多い

勝手に離婚したのにには、死別なら仕方ないけど自分で離婚しておいて、各種制度で保護されているのはずるいというもののようです。母子家庭になったのは、自分で勝手に離婚したことが原因でしょうか?

残りの理由は、様々な制度で経済的に支援されているというものです。母子家庭はずるいと言えるほどの経済的な支援を受けているのでしょうか?

女性の離婚理由は

母子家庭がずるいと言われることのひとつに、勝手に離婚しておいてというのがあります。勝手にというのが何を意味するのかいまひとつはっきりしませんが、なぜ離婚することになったのか理由を見てみましょう。

といっても、公的なデータで思い当たるのは、最高裁の司法統計位なので、令和3年度の司法統計から離婚調停の申し立て理由を多い順に並べてみました。

  1. 性格の不一致 17743
  2. 生活費を渡さない 14832
  3. 精神的に虐待する 12296
  4. 暴力を振るう 9162
  5. 異性関係 6574
  6. 浪費する 4124
  7. 性的不調和 3021
  8. 家庭を捨てて顧みない 2960
  9. 酒を飲みすぎる 2835
  10. 家族親族と折り合いが悪い 2789
  11. 病気 784
  12. 同居に応じない 699

統計的に一番多いのが性格の不一致ですが、よく見ると、精神的に虐待すると暴力を振るうを合計すると21458件となり、精神的または身体的な虐待が最も多くなります。

また、生活費を渡さないと浪費するの合計が18956件となり、経済的な理由によるものが2番めに多いことになります。ただ、生活費を渡さないは経済的な虐待と見ることもでき、そうすると精神的、身体的、経済的な何らかの虐待によるものが一番多いと見ることもできそうです。

こうしてみると、勝手に離婚したというよりは、弱い立場に置かれた女性がやむにやまれず離婚調停を申し立てたものが多いようですね。

シングルマザーの住宅

では、シングルマザーの住宅事情はどうでしょうか?平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告から見てみましょう。

母子家庭の住居のうち、生別を離婚だとすると、32.9%が持ち家でうち12.8%が母本人名義の家となっています。これは、離婚時に住んでいた夫名義の家にそのまま居住しているか、離婚時に財産分与を受けて母名義になった家に住んでいるというケースが多いのではないかと推測されます。これらは、離婚したといっても円満に話し合いができて離婚したケースと思われます。

残りの約67%は賃貸住宅ということになります。

賃貸住宅もすぐに良いところが見つかればいいのですが、実際はなかなか難しいようです。

「やっぱり貸せない」。神戸市の女性(43)は2年前、アパートの賃貸契約を交わす直前で、大家から入居を断られた。女性はパート従業員で、小学生から高校生までの3人の子どもを育てていた。家を探していたのは、元夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れるためだが、断られるのは6回目だった。

入居6回断られ…シングルマザーが直面する「住まいの貧困」とは(毎日新聞)

特に子供が小さいうちは、育児のためにパートやアルバイトで働く人も少なくありません。安定した仕事に就けていない場合、家賃が払えるか家主が不安に感じ、入居を断られることもよくあるようです。

母子家庭では安心して住める家を見つけるのも厳しいということですね。

シングルマザーの家計

次にシングルマザーの家計を平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告から見てみます。

シングルマザーの収入

母子家庭の母の平均年間収入は243万円です。平均収入とは、就労収入に生活保護や各種社会保障の収入など全てを加えた額です。ちなみに、母の平均就労収入(働いて得る収入)は200万円です。

父子家庭の父の平均年間収入が420万円(平均就労収入が398万円)です。

母子家庭の母は父子家庭の父と比べると、就労収入は約半分、平均収入は約6割ということになります。

養育費を受け取っている割合と金額

母子家庭で養育費を受け取っている割合は約24%です。残り約76%は養育費を受け取っていません。

養育費を受け取っている母子家庭で養育費の平均額は、子どもが1人の家庭で約38000円、2人で約48000円です。

先程の母子家庭の平均年間収入は養育費も含んだ額なので、養育費を受け取っていたとしても決して十分な収入があるとは言えいないですね。

母子家庭が受け取れる支援

母子家庭は、さまざまな手当や給付金を受け取ったり、各種減免制度を利用することができます。ただ、厳密に言うと、母子家庭だから利用できるとは限らず、所得が少ないから利用できるものも多いです。

ざっと並べてみるとこれだけあります。他にももっとあるかもしれません。

生活のための各種手当・補助金
  • 児童手当
  • 児童扶養手当
  • 児童育成手当
  • 特別児童扶養手当
  • 生活保護
  • 母子家庭の家賃補助(住宅手当)
  • ひとり親家庭医療費の助成
  • こどもの医療費の助成
子どもの教育費の援助
  • 幼児教育の無償化
  • 就学援助
  • 高校の就学援助
  • 大学・専門学校の授業料免除と給付型奨学金
生活のための各種減免制度
  • 所得税住民税の減免(寡婦控除)
  • 国民年金保険料の免除
  • 国民健康保険料の免除
  • 交通機関の割引
  • 粗大ごみ等処理手数料の減免
  • 上下水道の減免
資格取得のための給付金制度
  • 自立支援教育訓練給付金
  • 高等職業訓練促進給付金

このようにさまざまな給付金や免除を受けられるので、母子家庭はずるいと思うのかもしれません。

しかし、ここに挙げた制度は、母子家庭(ひとり親)家庭で利用できるものもあれば、世帯の所得が一定以下であれば利用できるものもあります。

もし、「こっちだって生活が苦しいのは変わらないのに母子家庭はさまざまな援助があってずるい」と思っているのでしたら、自分でも利用できる制度がないか調べてみるのも一つですね。

結局母子家庭はずるいの?

ここまで見てきて、やっぱり母子家庭ばずるいでしょうか?

離婚して母子家庭になったのは、虐待や経済的な理由によるものが多くを占め、好きで母子家庭になったわけではなく、そうするしかなかったというものが多いようです。

母子家庭が利用できる給付金や免除制度などの社会保障制度は多くあります。ただし、それら社会保障を加えても母子家庭の母の収入は年243万円で、父子家庭と比べると約6割しかありません。子どもを持てばわかりますが、年243万円で子どもを育てながら生活するのは、かなり大変だと思います。子どもにも相当我慢させることも多くなるでしょう。

母子家庭をずるいと感じる人がいる社会から女性のひとり親家庭でも自立してやっていける、そんな社会に変えていく必要があるのではないでしょうか。