住宅営業の際、お客さんから聞かれてすぐには答えられない。
そういうこともありますよね。
何でもかんでも専門的な内容の質問に答えられるわけではない、そうであっても、お客さんから見れば営業マンは住宅の専門家であり、住宅建築や購入の際の最初の相談相手。
知らないことが多いと、
「頼りないな~。」
と思われてしまいかねません。
例えば、住宅取得資金の贈与。
相続税が平成27年に増税されて、生前贈与が相続税対策として注目されています。
税金が絡むことなので、最終的にはその道の専門家に相談することになるとしても、ざっくりと道筋程度は示してあげたいもの。
ここでは、住宅取得資金の贈与について、非課税となる要件、手続き、住宅ローン控除との関係など一般の方が知りたいと思っていることを解説します。
この記事の内容
住宅取得資金贈与の要件
住宅取得資金の贈与を受けて非課税とするためには、要件がいくつかあります。
ちなみに、住宅取得等資金とは、贈与を受ける人が自分で住むための家屋を新築または取得するか、自分で住んでいる家屋の増改築等の費用に充てるための金銭をいいます。
これは、贈与を受ける人の要件、建物の要件、贈与を受ける金額の要件と分けて見ると、理解しやすくなります。
贈与を受ける人の要件
- 贈与の時に日本国内に住所があること
- 贈与してくれる人の直系卑属(子、孫、ひ孫)であること。養子も直系卑属に含まれます。
- 贈与の年の1月1日に20才以上であること
- 贈与の年の合計所得金額が2000万円以下であること
- 贈与の年の翌年3月15日までに贈与を受けた住宅資金全額を充てて住宅とする家屋の新築、取得または増改築をすること
- 贈与の年の翌年3月15日までにその家屋に住むこと。またはそんなに遅くないうちに住むことが確実であること
贈与を受ける人の要件が多くてめまいがしそうですね。
気にしなければならないのは、贈与される方の直系卑属であるかどうかと、翌年の3月15日までに住宅を取得して居住できるか。とういことではないでしょうか。
建物の要件
建物の要件は、新築住宅の取得と中古住宅の取得とで異なります。
新築住宅を取得するとき
- 住宅の床面積が50~240平方メートルで
- その床面積の2分の1以上を贈与を受けた人が住むために使うこと
中古住宅を取得するとき
- 取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたものであること
- 地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」、「住宅性能評価書の写し」又は既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類により証明されたものであること
非課税限度の金額
契約締結日 | 省エネ住宅 | 一般の住宅 |
---|---|---|
平成27年12月31日まで | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成28年1月1日から 平成29年9月30日まで | 1,200万円 | 700万円 |
平成29年10月1日から 平成30年9月30日まで | 1,000万円 | 500万円 |
平成30年10月1日から 平成31年6月30日まで | 800万円 | 300万円 |
契約締結日 | 省エネ住宅 | 一般の住宅 |
---|---|---|
平成28年10月1日から 平成29年9月30日まで | 3,000万円 | 2,500万円 |
平成29年10月1日から 平成30年9月30日まで | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成30年10月1日から 平成31年6月30日まで | 1,200万円 | 700万円 |
「省エネ等住宅」とは、一定の省エネ等基準、免震建築物に適合する住宅用の家屋であることについて証明されるものです。
具体的には、
- 住宅性能証明書
- 建設住宅性能評価書の写し
- 長期優良住宅認定通知書の写し
- 認定長期優良住宅建築証明書
などを、贈与税の申告書に添付することにより証明がされたものをいいます
住宅取得資金贈与の手続き
住宅取得資金の贈与税の非課税の適用を受けるためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、贈与税の確定申告をしなければなりません。
非課税だから申告不要ということにはなりません。
非課税の適用を受けるために申告する必要があります。
この申告を忘れないように注意しないといけません。
必要書類
住宅取得資金の贈与税の申告に必要な書類は、
- 戸籍謄本
- 源泉徴収票
- 売買契約書や請負契約書の写し
- 登記事項証明書
- 住民票の写し
- 省エネ住宅の場合は、その証明書
が必要です。
詳しいことは、確定申告の時期になると国税庁のホームページで解説があるので、そちらも見てください。
住宅ローン減税との関係
住宅ローン減税との併用
住宅取得資金の贈与を受けるときに、
「贈与税が非課税になるのに、その上住宅ローンを借りていいの?」
「住宅ローン減税も併用できるの?」
という疑問もあります。
結論を言えば、住宅取得資金の贈与を受けても、不足資金を住宅ローンで融資を受けて賄うことはできますし、住宅ローンを組めば住宅ローン減税も併せて利用できます。
ただし、金額によっては、一部住宅ローン減税を受けられない可能性もあります。
住宅ローン減税の注意点
住宅ローン控除の対象となる借入金は、「住宅を取得するための資金」に充てられるものに限られます。
問題になるのは、
「住宅取得資金の贈与の金額」+「住宅ローンの金額」が「住宅を取得するための金額」を超える場合です。
例えば、
- 住宅取得資金の贈与の金額が500万円で
- 住宅ローンの金額が3000万円
- 住宅を取得するための金額が3300万円
のとき、住宅を取得するために要する金額より200万円多くの資金を調達しています。
この場合、贈与を受けた500万円については全額を住宅取得資金に充てたものとし、オーバーした200万円については住宅を取得するものの資金とはみなされません。
その結果、住宅ローン控除の対象となる住宅ローンの金額は、3000万円か200万円を控除した2800万円となります。
まとめ
細かい要件まで覚えておくことは大変だと思います。
ただ、最低限、
- 贈与する人と贈与を受ける人の関係
- 非課税になる金額の上限
- 確定申告が必要ということ
- 住宅ローン減税との関係
これは頭に入れておくといいですね。