空き家問題とは〜その原因と空き家にしておくと何が問題になるのか

空き家問題とは

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空き家という言葉を聞くことが増えてきました。今や空き家が大きな社会問題になりつつあります。

相続した実家が空き家になっている方や、このままだといずれは実家が空き家になってしまう方は多いのではないでしょうか?

実は、私も、いずれは実家が空き家になってしまうことがほぼ確定しているので、空き家問題は他人事ではありません。

空き家になると何が問題で、空き家の所有者や相続人にどのような負担があるのかを知っておくことは大切です。なぜなら、空き家問題を知っておくことで、空き家を空き家のまま放置しないようにあらかじめ対策を考えることもできるからです。

ここでは、空き家が増える原因と空き家になるとどういう問題があるのかを説明します。

空き家が増える原因

空き家の原因の50%以上は相続

国土交通省が行った平成26年空き家実態調査によれば、空き家を取得した経緯の52.3%は相続したものです。

つまり、空き家の半分は、親が亡くなった後で誰も住まなくなった家ということです。

総務省の調査によれば、現在、50代以降の日本人の持ち家率は8割を超えています。これは、50代の子ども世代と70代を超えるその親世代の両方とも、それぞれがマイホームを持っているということです。

そのため、親が亡くなって実家を相続しても、子どもには自分の家があるので親の家には住むことはありません。その結果、相続が発生すると必然的に空き家は増えることになります。

また、子どもが実家から遠く離れて住んでいることも珍しくありません。子どもは仕事の関係で東京に住んでいて、実家は地方にあるというようなケースです。そのような遠方の空き家は十分な管理が困難です。

税金面では空き家にしておく方が得

相続によって親の家を引き継いだものの利用するわけでもなく、かといって家を取り壊して更地にするわけでもなく、何もしないで放置したままになってしまいますが、これには税金の仕組みにも原因があります。

それは、どれほど老朽化しボロボロな建物であっても、建物が建ってさえすれば固定資産税の住宅用地特例により税額が更地の6分の1になります(後に説明する特定空き家に指定されない限り)。

このような税金のメリットがあれば、空き家にしておいた方が得だと考えてしまうのが普通です。

こうして、管理が不十分な空き家が増えていっています。

空き家の近隣への問題点

空き家

空き家を放置していると、さまざまなトラブルの原因になり、近隣の住民にも多大な迷惑をかけてしまうことになります。

空き家による環境悪化で近所迷惑

一戸建て住宅の庭の手入れが行き届かないと雑草や草木が伸び放題になってしまいます。そのような空き家は、周辺の景観が見苦しくなるだけではなく、外から見てすぐに空き家だと分かります。

空き家があることによる環境の悪化で、周辺の住民に不安感と不快感を与えるようになってしまいます。

空き家に野生動物の侵入

雑草や草木が伸び放題になると、虫やネズミ、野生動物が寄ってきて住み着くことがあります。

そうなると、住み着いたネズミや野生動物の糞尿により、周辺に悪臭を撒き散らすことになります。また、ネズミなどの野生動物の繁殖の場になってしまうと、周辺にネズミなどが増えてしまいます。

こうして、空き家は不衛生なために町全体を汚してしまい、近隣トラブルの原因になります。

空き家に不審者の侵入

手入れの行き届かない空き家は、外から見てもすぐに空き家だと分かってしまいます。

そのような空き家に、浮浪者や不審者が侵入し住み着いてしまうこともあります。平成30年には受刑者が逃走した際、空き家に潜伏しながら逃走を続けたという事件もありました。

空き家に不審者が侵入するといったことがあると、周辺の住民の不安感が増大させることになります。

空き家の火災、放火

住宅が密集している都市部の空き家で一番怖いのは火災かもしれません。私も空き家の隣家の人から「火事が起こるのが怖い」という言葉を聞いたことがあります。

電気が通じていれば電気火災の可能性がありますし、不審者が侵入してタバコや火の不始末による火災、さらには放火など空き家の火災の原因は多数あります。

空き家の火災は、誰も住んでいないために発見が遅れ、周辺の家屋に延焼する可能性も小さくありません。

空き家があることで周辺に与えている不安はかなり大きいと言えるでしょう。

建物の腐朽、破損、倒壊

それに加えて、空き家の管理も一筋縄ではいくはずもなく、もしそのまま放置したままにすれば、家のガラスが割れ、外壁は崩れ、室内は湿気により劣化していきます。

このように空き家の期間が長くなれば、建物は腐朽・破損していきます。

また、建物が古く旧耐震基準で建てられた家は、地震で倒壊する危険をはらんでいます。いつ起きてもおかしくない地震は不安です。

さらには、台風による建物の損壊、大雪による倒壊の心配もあります。

空き家が増えると町として成り立たなくなる

空き家が増えることは、地方自治体にも深刻な影響を与えることになります。

ドイツの研究によれば、空き家率が30%を超えると、人の住む町として成立しなくなるという結果が出ています。

これは人手や税収が減り、上下水道や公共サービスが行き渡らなくなり、治安の悪化を招いて犯罪率が増えるとされているためです。

深刻化する空き家問題は、老朽化による倒壊やゴミ、不法投棄、景観を損ねるなどの恐れがあります。また、不審者の侵入など治安の悪化は町全体のイメージの悪化と衰退を意味します。

空き家の問題点(所有者)

空き家

空き家の維持費がかかる

空き家で住んでいなくても最低限の維持費はかかってしまいます。

固定資産税は、毎年所有者にかかってくるので相続した親の家の固定資産税も支払いをしないといけません。

相続して不動産の名義を変更すれば、翌年からは所有権の登記の名義人に固定資産税の請求が届きます。不動産の名義変更をしていないと、不動産がある市町村から「相続人代表者」を届けるよう通知が届き、以後代表者宛に固定資産税の請求が届くようになります。

また、たまにでも家の管理に行くとなれば、訪問したときのために電気や水道は通じさせておく必要があり、毎月電気代や水道料金もかかります。

さらに、マンションであれば管理費や修繕積立金も支払う必要もあります。

このように、住んでいない家でも、かなりの維持費がかかり、その負担は住んでいる家よりも大きく感じられます。

特定空き家に指定されると固定資産税が上がり強制的に取り壊されることも

親が亡くなって相続し、そのまま誰も住まなくなった家を放置していると「空き家」とみなされ、さらに、次のような状態にある空き家は「特定空き家」とされることがあります。

特定空き家とみなされる状態
  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空き家になると、自治体が調査のために空き家に立ち入り調査をしたり、所有者に対して「きちんと管理できるよう」に助言・指導したりします。

そして、自治体が助言・指導しても空き家の状態が改善されない場合には、自治体は次の手段として、一定の猶予期間を定めて空き家の状態を改善するように空き家の所有者に勧告することができます。

勧告が出ても改善しないと、翌年から固定資産税の住宅用地特例から除外され、土地の固定資産税は最大で6倍になってしまいます。

また、この勧告にも従わないときは、自治体は必要な措置を取るよう命ずることができ、その命令にも従わないときは、自治体が空き家の所有者に代わって必要な措置を取ります。場合によっては、自治体は空き家を強制的に取り壊すこともあります(代執行)。

この代執行による取り壊し費用は、後に自治体から所有者に請求されます。

このように管理できない空き家が特定空き家に指定されると、空き家所有者の負担はかなり大きくなってしまいます。

不動産の価値が下がる

誰も住まなくなると家はどんどん傷んでしまい、価値が下がってしまいます。

ホームレスや不審者が侵入、または不良のたまり場となったり、不法投棄など様々な問題を起こしかねない空き家は、様々なリスクから住宅としての価値はもはや0に等しくなります。

そうなると、売却するにも一般のエンドユーザーの買い手がつくことはまずなく、業者に安く引き取ってもらうしかなくなります。

まとめ

このように、親の家を相続しても誰も住まないで空き家にしておくことは、近隣に迷惑になるだけでなく、相続人にとっても負担が大きく、誰にもメリットがありません。

このような空き家は早めに売却するのか有効活用するのか、空き家のまま放置しない方策を決める必要があります。