母子家庭の子どもが大学に進学を希望しても、シングルマザーで爪に火を灯すような生活をしていると、子どもを大学に進学させることは経済的に大変なことでした。
そのため、経済的な理由で大学への進学をあきらめていたことがこれまでは多かったかもしれません。また、大学に進学するために多額の奨学金を借りたために、卒業後に奨学金の負担に苦しんでいるということも珍しくありませんでした。
しかし、2020年(令和2年)から高等教育無償化(大学等の授業料減免制度)が始まり、母子家庭の子どもでも学費の負担なく大学に進学ができるようになりました。
この制度を利用できれば、子どもの大学進学の夢の実現を応援することができますね。
ここでは、大学等の授業料の負担がゼロになる高等教育の無償化制度と、それでも教育資金が不足するときの公的支援策について説明します。
もし、あなたが新型コロナウイルスの影響で家計が大きな影響を受け、大学生の学費が心配でこの記事を読まれている場合、新型コロナウイルスの支援制度をまとめた記事も参考にしてください。また、新型コロナウイルスの影響で家計が大きな影響を受けた場合、この記事にある給付型奨学金を家計急変により申請できる可能性があります。家計急変による給付型奨学金の申請は、いつでも受け付けています。
この記事の内容
大学・専門学校の授業料免除になる制度とは
高等教育無償化制度で授業料免除の対象になる学校
- 大学
- 短期大学
- 高等専門学校
- 専門学校
高校については、まだ完全な無償化にはなっていません。
免除される授業料等の金額
免除されるのは、大学等の入学金と授業料です。
国公立 | 私立 | |||
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約17万円 | 約39万円 | 約25万円 | 約62万円 |
高等専門学校 | 約8万円 | 約23万円 | 約13万円 | 約70万円 |
専門学校 | 約7万円 | 約17万円 | 約16万円 | 約59万円 |
国立大学の免除額の上限は、文部科学省で国立大学の授業料の標準額を決めていて、その標準額を上限として免除されます。
ただ、国立大学でも大学によっては標準額より高い授業料にしているところもあります。このような大学では上限額までしか免除されないのか、それともの授業料全額が免除になるのかは、その大学が決めることになっています。
私立大学の入学金については、私立大学の入学金の平均額を上限額としています。
また、私立大学の授業料については、私立大学の授業料平均と国立大学の授業料の標準額の差額の2分の1を、国立大学の授業料の標準額に加算した額になっています。そのため、私立大学の授業料は、完全に無償化されるわけではありません。
私立大学の授業料は大学によって違います。
文系 | 理系 | |
早稲田大学 | 約96万円 | 約144万円 |
慶応大学 | 約87万円 | 約126万円 |
上智大学 | 約126万円 | 約180万円 |
私立大学の授業料は大学や学部によってかなり違うことがわかると思います。
ただ、どの私立大学に行っても、免除される授業料の上限額だけではまだ足りません。足りない分はこのあと説明する給付型奨学金を利用することも検討しないといけないかもしれません。
授業料等免除になる収入の目安
大学の授業料等が免除になるのは、住民税非課税世帯の学生です。
母子家庭の場合、所得が125万円以下で住民税が非課税になります。年収にすると目安は204万円以下で住民税が非課税です。
つまり、前年の給料の合計が204万円以下であれば、授業料全額免除の対象になります。
また、これを少し超えていても、授業料の3分の2または3分の1が免除になります。
すべての大学が対象とは限らない
授業料等の免除の対象になるのは、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校ですが、全ての学校が免除の対象になるとは限りません。
国が授業料等の免除の対象になる学校の条件を決めて、その条件をクリアしているかどうかを国または自治体が確認します。そして、確認の結果、条件をクリアしていることが認められた学校だけが、授業料免除の対象になります。
今のところ、どの程度の大学等が対象になるのかわかりませんが、志望校が授業料等免除の対象になっているかどうかは進学先を決める前に確認する方が良いですね。
成績が悪いと授業料免除にならないことも
大学の授業料等が免除になるには、学生本人の要件もあります。
高校の成績がそんなに良くなくても、学生本人のレポートや面接によって学習意欲や進学目的を確認して判断することになっています。大学進学時点では、できるだけ授業料免除を認めて進学しやすくするのではないかと思います。
ただし、大学進学後は、その学習状況に厳しい条件を付けて、単位をたくさん落とすなど成績が悪い場合には、授業料免除を打ち切られます。
だから、大学進学後は、しっかりと勉強することが大事です。
返済不要の給付型奨学金
私立大学の授業料免除額の上限を実際の私立大学の授業料学を比べると、私立大学は授業料免除額だけでは足りません。
また、大学が施設設備費や実習費を別に徴収している場合、この施設設備費や実習費は免除されないので、これもどうにかして用意する必要があります。
さらに、大学は教科書が高く年間数万円かかるので、教科書代も必要です。
このように、私立大学に行く場合は授業料免除だけでは授業料をまかなえませんし、国立大学でも実習費が必要だったりすると授業料免除ではやはり足りません。そのうえ教科書代もかかりますしね。
このようなときのために、授業料免除の無償化制度だけではなくて、返済不要の給付型奨学金制度もできました。
奨学金というと後で返済しないとけないというイメージかもしれませんが、給付型奨学金は返済しなくてもいい奨学金です。
受け取れる奨学金の年額は次の表のとおりです。下の表の金額は、大学・短期大学・専門学校の場合の金額で、高等専門学校の場合は実態に応じて大学生の5割から7割が支給されます。
自宅通学(年額) | 自宅外通学(年額) | |
国公立 | 約35万円 | 約80万円 |
私立 | 約46万円 | 約91万円 |
給付型奨学金で大学進学に十分足りる?
現実的には、個人的な経験も含めて考えると、次のような感じだと思います。
国立大学に自宅から通う場合は、授業料免除と給付型奨学金で大学に通う費用はまかなえそうです。これは文系とか理系とか関係なく、医学部であってもです。国立大学は文系・理系・医学部も授業料は一緒ですからね。
私立大学は文系学部に自宅から通学する場合は、授業料免除と給付型奨学金でほぼまかなえると思います。
ただし、私立理系では、自宅から通学する場合でも授業料免除と給付型奨学金では少し不足すると思います。
自宅外で一人暮らしする場合には、授業料免除と給付型奨学金では国立でも私立でも厳しいです。生活費が出ません。
しかたがって、母子家庭から大学に進学する場合には、自宅から通える地元の大学にするのが負担が無いでしょう。
しかし、どうしても志望する学校や学部に自宅から通えないとき、授業料免除と給付型奨学金だけでは厳しいので、他の奨学金も検討することになりそうです。
実は給付型奨学金は他にもあります。下記の本でまとめて紹介されているので探してみてもいいかもしれません。
母子寡婦福祉資金貸付ので大学に進学
入学資金が足りないとき
ところで、国の制度で私立大学で免除になる入学金は私立大学の平均額です。だから、入学する大学の入学金が平均よりも高いときは、大学独自に免除してくれない限りは、入学金の不足分を用意して払わないといけません。
入学金は、大学に入学する前に払わないといけないので、給付型奨学金を待っていることはできません。
そんなときに利用できるのが、母子寡婦福祉資金貸付の就学支度資金です。これは、入学金などの入学するために必要な資金を無利子で貸してくれる制度です。
母子寡婦福祉貸付資金の修学支度資金で借りられるのは、国公立大学だと38万円、私立大学で59万円です。これだけあれば、入学に必要な資金はまかなえるのではないでしょうか。
一人暮らしの資金が足りないとき
どうしても自宅外の大学に通うため、一人暮らしをしなければならないとき、授業料免除と給付型奨学金だけではたりません。
このとき、大学独自の奨学金や他の奨学金を借りるのも一つの方法です。
ただし、それだけではなくて、母子寡婦福祉資金貸付の修学資金を借りるのも一つの選択肢です。
母子寡婦福祉資金貸付の修学資金は大学の場合、最大で月額9万6000円を無利子で借りることができます。
この資金を借りれば、自宅外の大学に通える可能性もあります。
ただし、借りる以上は返済しないといけません。4年間借りるとかなりの金額になるので、本当に借りて自宅外の大学に行くのか、自宅から通える大学にするのか、親子でよく話し合う必要があるでしょう。
母子寡婦福祉資金貸付の窓口
母子寡婦福祉資金貸付の申請や問い合わせの窓口は、住んでいる市区町村の福祉担当の窓口です。
事前に手続きなど詳しいことは窓口に確認してください。
まとめ
以前と違い、母子家庭からでも大学に通える制度が整ってきました。
私立大学に通う場合には十分とは言えないかもしれませんが、それでも母子家庭の子どもの夢を叶えるために大学に進学する助けにはなるでしょう。
子どもが大学進学の夢をあきらめないで済むように、よく話し合って最善の道を選んでください。