休眠預金活用法という法律が2018年1月より施行されました。
休眠預金とは、後ほど詳しく説明しますが、一定期間全く入出金などの異動がない預金のことで、毎年1000億円もの休眠預金が新たに発生しているとも言われています。
したがって、休眠預金自体は珍しいものではありません。
また、家族が亡くなっても全ての口座を把握できているとは限らず、中には相続手続がされないまま放置されている口座もあるでしょう。
このような休眠預金は、これまでは一定期間経過後に銀行の収益になっていました。
「休眠預金が銀行の収益になっていた」と言っても銀行に取り込まれてしまったわけではなく、銀行は何年経っても預金の払い戻しには応じていました。
ところが、休眠預金活用法の施行により、今後は休眠預金を銀行内部に留め置くのではなく、銀行から出てもっと社会のさまざまな場面で活用されることになりました。
そうなると、次のような疑問が沸いてきます。
休眠預金の払い戻しはできるのでしょうか?
この記事では、こういった疑問に答えます。
この記事の内容
休眠預金とは
まずは、どのような預金が休眠預金にになるのかを説明します。
休眠預金活用法で休眠預金とされるのは、10年以上入出金などの取引(異動)がない預金です。
休眠預金の対象となる預金の種類
休眠預金の対象となる預貯金は銀行の全ての預貯金というわけではなくて、預金保険・貯金保険の対象になる預貯金です。
休眠預金活用法のスキームに預金保険機構が絡んでいるため、預金保険の対象になる預貯金のみが対象になっているわけです。
具体的には次のとおり。
*一般の銀行等では「預金」と呼び、ゆうちょ銀行では「貯金」と呼びますが、ここではそれらを合わせて「預貯金」としています。
10年以上取引がない異動とは
入出金などの取引のことを法律では「異動」と呼んで、10年以上異動が無い口座が休眠預金の対象になります。
この異動には、法律によって全ての金融機関共通の異動と各金融機関が行政庁から認可を受けて異動となるものとがあります。
- 入出金(金融機関による利息の支払を除く)
- 手形または小切手等の提示による第三者からの支払請求
- 公告された預金等に対する情報提供の求め
- 通帳や証書の発行、記帳、繰越
- 残高照会
- 契約内容・顧客情報の変更
- 口座を借入金の返済に利用する旨の申し出
- 預金等に係る情報の受領
- 総合口座等に含まれる他の預金等の異動
こうして見ると、入出金をしていれば(利息は除く)異動があったことになります。
しかし、通帳の記帳をしたとか、キャッシュカードで残高照会をしただけでは、金融機関によっては異動があったことにならない可能性がありますし、住所が変わって、その届出を金融機関にしていても、異動になるかどうかは金融機関によることになります。
また、定期預金のような満期があるものについては、自動継続されるものであっても最初の満期日から10年間をカウントします。
通帳の記帳や残高照会をしたり、使う予定がないから定期預金を自動継続していても、これが金融機関によっては異動とならずに休眠預金になってしまう可能性があるのは、私たちの感覚とはかけ離れていますね。
なお、この金融機関が認可を受けて異動事由になるものは、各金融機関から公表されることになっています。
休眠預金になるための手続き
10年間異動がない口座の預金は自動的に休眠預金として扱われるのかというと、そうではありません。
休眠預金として扱われるためには、一定の手続きを経なければなりません。
まず、休眠預金の対象となりそうな預金がある場合には、各金融機関はホームページ上で公告をします。
さらに、1万円以上の残高がある預金については、金融機関に登録されている住所に通知を郵送します。
1万円未満の残高しかない預金については、個別の通知はされません。
そして、金融機関の通知が届いた場合、または、公告について金融機関に照会があった場合は、異動があったものとみなされ休眠預金とはなりません。
しかし、どちらもない場合には、休眠預金となってしまいます。
では、休眠預金となってしまった場合、その預金はどうなってしまうのでしょうか?
休眠預金はどうなる?
休眠預金がどうなるかというと、「休眠預金活用法」とう法律の名のとおり預金が活用されることになります。
どのように活用されるかというと、民間団体が行う公益に資する活動に助成や貸付が行われます。
公益に資する活動とは、次のような活動が予定されています。
- 子ども及び若者の支援に係る活動
- 日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者の支援に係る活動
- 地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している 地域の支援に係る活動
わかったようなわからないようなあいまいな規定ですが、社会のさまざまな変化に対応できるよう、あえてこのように規定し、そのときどきの要請に応えようということです。
ただ、民間の金融機関に預金を残したままでは、その資金を活用することはできません。
そこで、休眠預金を活用する前提として、休眠預金は金融機関から預金保険機構に移管されます。
そして、移管されると私たち預金者の金融機関に対する預金債権は消滅します。
私たちの預金が民間の公益活動のために使われて、預金債権が消滅すると、もう休眠預金の払い戻しはできなくなってしまうのでしょうか?
休眠預金の払い戻し
休眠預金は銀行から預金保険機構に移管されると、預金は銀行が預かっているものではなくなり、そのために私たちの預金債権も消滅してしまいます。
そうすると、銀行に行っても休眠預金を引き出すことはできないのではないかと心配になってきます。
大丈夫です。
休眠預金として預金保険機構に移管された後でも、もともと取引した金融機関の窓口で手続きをすれば払い戻しを受けることが可能です。
払い戻しをするのに期限はありません。
また、払い戻しまでの利息も付けてもらえます。
そうと分かると少し安心ですね。
ですが、住所が違うとか通帳やカードがないとか印鑑を紛失しているとか様々な状況が考えられ、そういう場合には払い戻しの手続きは面倒になるかもしれません。
具体的な手続きは、各金融機関の窓口で確認する必要があるでしょう。
まとめ
10年以上取引がない預金は、一定の手続きを経て休眠預金として扱われます。
この場合、預金は金融機関から預金保険機構に移管され、民間が行う公益活動に充てられ、私たち預金者の金融機関に対する預金債権は消滅します。
しかし、そうなった場合でも、金融機関の窓口でいつでも払い戻しを受けることは可能です。
ですが、大手メガバンクでは口座管理料を徴収することを検討しているとの報道もあり、長期間使っていない口座から口座管理料を差し引かれると1円も残らないということにもなりかねません。
使っていない口座に心当たりがあるときは、早めに解約しておくのが良さそうですね。