「自己破産はイヤです!」
「自己破産以外の方法で借金を整理できませんか?」
借金の支払いが苦しくなって相談に来られた方から聞くことがある言葉です。
このように言われる理由のひとつに「自己破産」という言葉の持つイメージがよくないことがあるように感じます。
しかし、それだけではありません。
自己破産を避けようとする理由として大きいのは、「自己破産」について誤った知識を持っていることや、正しい知識を持っていないことだと感じます。
この記事では自己破産のデメリットについて説明しましょう。
この記事の内容
自己破産よくある誤解
自己破産のデメリットを説明する前に、まず自己破産についてよくある誤解から説明しますね。
- 選挙権が無くなる
- 年金がもらえなくなる
- 銀行の口座を持てなくなる
- 会社を辞めなければならない
といったものがありますが、これらは全て誤解です。
自己破産をした後でも生活をしていかなければならないので、このような行き過ぎた制限はありません。
自己破産とは、そのデメリットは?
自己破産をして免責の決定が出ると、借金の支払い義務から解放されます。
つまり、借金の支払いをする必要がなくなります。
借金の支払いをしなくても良くなることが自己破産のメリットです。
しかし、その反対に自己破産にはデメリットもあります。
この自己破産のデメリットは誤解されているものや都市伝説というようなものが多く、一般に正確に理解されているとは言えないようです。
では、実際にある自己破産のデメリットはどのようなものでしょうか?
- 手続きが面倒
- 財産が清算される
- ブラックリストに載る
- 職業によっては制限がある
- 保証人に迷惑がかかる
手続きが面倒
まず挙げられるのは、手続きが面倒ということです。
自己破産の申し立てがあると、裁判所は、本当に借金の支払いができない状況にあるのか、借金の支払いを免除しても良いのかをを判断するために慎重に検討をします。
そのため、裁判所に資料を提出したり、さまざまな事情を説明したりしなければなりません。
これも司法書士か弁護士に依頼すれば、自分でやるよりはスムーズに進むでしょう。
しかし、それでも司法書士や弁護士に完全に任せきりというわけにはいきません。
司法書士や弁護士は、裁判所に提出する書類を作成したり、裁判所に事情の説明をしたりしてくれますが、全てを丸投げすることはできません。
司法書士や弁護士の求めに応じて、裁判所に提出する資料を揃えたり、借金が増えて自己破産することになった事情を説明する必要があります。
初めてのことで大変かもしれませんが、これをきちんとしないと、いつまでたっても自己破産の申し立てができません。
「面倒だな」と感じるかもしれませんし、「司法書士や弁護士がうるさいこと言う」と思うかもしれませんが、自己破産手続きを進めるためには必要なことなのです。
財産を清算される
自己破産の最大のデメリットは、財産を売却処分して清算されてしまうことでしょう。
長年住んだ思い入れのあるマイホームもいずれは売却されるので、家を出て引越しをしなければなりません。
それでも、全ての財産が売却されてしまうわけではありません。
破産後の生活に当面必要な財産は手元に残せるようになっています。
具体的には「99万円までの現金」「20万円以下の財産」は清算されることなく手元に残せます。
つまり、そのまま手元に残せるということです。
- 預貯金の残高を合計して20万円以下のときの預貯金
- 保険の解約返戻金の合計が20万円以下のときの保険の解約返戻金
「意外と多い!」と思いませんか?
インターネット上で、預貯金が20万円を超える場合は、口座から引き出して現金にしておけば99万円までは資産とみなされず手元に残せるといった情報を見ることがあります。
しかし、破産直前の換金行為がどのように扱われるかは、換金した事情や裁判所の運用によって異なるので、自分で判断しないで依頼する司法書士や弁護士に相談してからにする方が無難です。
ブラックリストに載る
自己破産をすると信用情報機関に「破産」した情報が載ってしまいます。
一般に「ブラックリスト」と呼ばれるものです。
ただし、信用情報を見ることができるのは、貸金業者などが貸付をするときに信用状況を確認するときで、その他で見られることはありません。
また、一般の人が他人の信用情報を見ることはできないので、「ブラックリスト」に載っていることを誰かに知られることもありません。
自己破産をしなくても、債務整理に着手した段階で信用情報にはその旨が登録されますし、債務整理をする前に返済が遅れれば「延滞」の旨が信用情報に登録されています。
したがって、自己破産をする前の段階で、信用情報はブラックになっていると思った方が良いでしょう。
「ブラックリスト」に載っていると、金融機関からお金を借りたり、クレジットカードを作ったりということは普通できません。
絶対にできないかというとそういうわけでもなく、自己破産をしてすぐにカードを作ったり金融会社から借り入れをしたりしているケースもあります。
「ブラックリスト」にいつまで載っているのかも気になるところですが、信用情報機関のホームページによると、「自己破産という事実が発生してから5年間」と記載されています。
自己破産をしても、将来ずっと「ブラックリスト」に載っているわけではありません。
職業によっては制限がある
自己破産をするとできない仕事があります。
よくあるケースは、
- 保険の募集人
- 宅地建物取引士
- 警備員
です。
これも、ずっとできないわけではなくて、破産して免責が確定するまでの間です。
一般的には、破産の開始決定から3~4か月といったところです。
保証人に迷惑がかかる
自己破産をして借金の支払い義務から解放されても、保証人には影響がなく、保証人の支払い義務は残ります。
したがって、今度は保証人が債権者から請求をうけることになります。
保証人になってもらうときに「絶対に迷惑はかけないから」と言って保証人をお願いしているケースがほとんどですが、自己破産により多大な迷惑をかけてしまうことになります。
それでも、保証人に支払い能力があれば良いですが、無い場合、保証人も債務整理を検討しなければなりません。
保証人がいる場合には、自己破産をする前に保証人の方がどうするか話し合っておく方が良いでしょう。
自己破産の家族への影響
自己破産をすると家族にはどういう影響があるでしょうか?
先にも書きましたが、自己破産をするとマイホームがある場合は売却されてしまうので、引越しをしなければなりません。
場合によっては、子どもは転校をしなければならなくなるかもしれません。
他に子どもの学校や就職への影響を心配される方も多いですが、結論を言えば、影響ありません。
あとは、家族が保証人になっているような場合、保証人として借金の支払いをしないといけなくなるので、一緒に破産することを検討しないといけないかもしれません。
自己破産に至るまでの間、借金の支払いに追われて家族(特に子ども)に我慢を強いることも多かったと思います。
しかし、自己破産で借金から解放されれば、落ち着いた生活が取り戻せるので、家族にとっても良いことだと思いませんか。
まとめ
「自己破産」には、それほど大きなデメリットが無いと思いませんか?
それでも、日々の生活費の支払いも返済も、その収支のほとんどをカードに頼り続けてきた方の中には、カードが使えない生活を非常に怖がる方もいらっしゃいます。
破産後の生活がイメージできないことが理由ですね。
私が印象に残っている依頼者の言葉を紹介しましょう。
その方は自己破産された後で次のように言いました。
「自己破産後は給料として入ってくる現金だけで毎月生活しています。決して裕福というわけではありませんし、給料日前はいつも金欠です。それでも、支払いの心配をしないで済むのはいいですね。」
借金の支払い義務が無くなるとは言っても、自己破産に本当にメリットと呼べるものがあるのかは正直私にも分かりません。
ただ、これだけは言えると思います。
自己破産すると今とは違った新しい生活が始まります。