変動金利と固定金利 住宅ローンの仕組みの違いを知ってリスク管理を

金利

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住宅ローンの検討を始めると、利率や月々の返済額とともに気なるのが

変動金利」と「固定金利」どちらにすればいいのか?

ということではないでしょうか。

どちらを選ぶにしても、「変動金利と固定金利の違いくらい知ってるよ。」と思っているかもしれませんが、変動金利と固定金利の仕組みの違いは意外と正確には理解されていないものです。

最近の住宅ローンは低金利で安定しています。
しかし、「この先も金利はずっとこのままなのか」「いつ金利が上がり始めるのか」「上がるとすればいつどこまで上がるのか」は誰にも分かりません。

司法書士をしていると相談の中に、住宅ローンの仕組みを理解していなかったために払えなくなったというケースがあるのも事実です。

住宅ローンの返済は35年もの長期に渡るので、当初の返済額のみを気にするのではなく、住宅ローンを申込みする前に、住宅ローンの仕組みの違いとリスクを理解しておくことは大切だと感じます。

Chouette

「変動金利」「固定金利」どちらの住宅ローンを選ぶにしても、その仕組みを理解しておけば、早めに変化に気づいて破綻という大きなリスクを避けることができるようになります。

住宅ローンの「変動金利」と「固定金利」、その仕組みの違いについて確認していきましょう。

固定金利の住宅ローンの仕組み

固定金利とは
固定金利とは、借入から最終の返済まで金利が一定で固定されている住宅ローンです。
返済額も最後まで一定です。

固定金利の住宅ローンは住宅金融支援機構のフラット35が代表的な商品ですが、銀行によっては独自に35年固定の住宅ローンを扱っているところもあります。

固定金利の住宅ローンは、変動金利に比べると金利が高めなことはデメリットです。

変動金利の利率が35年間あまり上昇しなければ、固定金利の住宅ローンは変動金利の住宅ローンより返済総額が多くなってしまいます。

しかし、固定金利の住宅ローンは、35年ローンで借りても金利と返済額はずっと変わらないため、返済計画が立てやすいのが最大のメリットです。

固定金利住宅ローンのリスク

固定金利の住宅ローンは、融資する金融機関が将来の金利上昇リスクを負っています。
そのために、変動金利と比べて固定金利の方が融資利率が高く設定されているんです。

変動金利型住宅ローンとは違い、固定金利の住宅ローンでは借りたときに最終回までの返済額が確定しているので、この後変動金利のところで説明する「最終返済日に未払利息や元金が残ってしまって一括返済しなければならない」といったことは起こらないので安心です。

「じゃあ、借りる方はリスクがないから固定金利は安心」と言えるかというと、必ずしもそうではありません。

固定金利の住宅ローンではデフレになる場合のリスクは借り主が負うことになります。

日本は長い間デフレに苦しんでいます(いました)が、デフレになるとお金の価値が上がります。

「お金の価値が上がる」とはどういうことかというと、デフレになると将来の1万円は今の1万円より価値があるということです。
極端なことを言えば、10年後の1万円はデフレで今の1万1000円の価値と同じになっているかもしれません。

そうすると、デフレになると、固定金利の住宅ローンで返済額は一定でも、住宅ローンの負担感は大きくなってしまいます。

固定金利で借りていてデフレが続くような場合は、早めにより低金利の住宅ローンに乗り換えることを検討すべきかもしれません。

変動金利型住宅ローンの仕組み

変動金利型住宅ローンとは
変動金利とは、文字どおり借りている期間中に金利が変動する住宅ローンです。
金利が上がることもあれば下がることもあります。

今は、変動金利の利率が1%を切る金利になっているので、変動金利の住宅ローンがとても魅力的に見えます。

金利が低い変動金利にしようかな

と思っても無理もありません。

ちなみに、変動金利タイプの住宅ローンは「変動金利」と謳っているものに限られません。

「5年固定」とか「10年固定」といった固定金利選択型変動金利に一定期間金利を固定する特約を付けたものなので、実質的には変動金利の住宅ローンです。

変動金利の住宅ローンは、固定金利の住宅ローンより金利が低くなっているので、金利が上がらなければ、総返済金額を低く抑えることができます。

ですが、変動金利型の住宅ローンは、「金利」が「変動」するものなので金利によって将来の返済額も変動する可能性もあります。

変動金利の住宅ローンでは、将来の金利上昇リスクは借り主が負うことになります。

変動金利型の住宅ローンを借りる場合、金利と返済額がいつどのようなルールで見直されるのかを知っておかないと、住宅ローンを払っているのに減っていないという現実に直面して慌てることになるかもしれません。

変動

変動金利型住宅ローンの金利と返済額の見直し

変動金利住宅ローンの借入金利の見直しがされるのは、一般的には毎年4月1日と10月1日。
4月1日に見直された金利は7月の返済から、10月1日に見直された金利は1月の返済から適用されます。

金利が変わるとその都度住宅ローンの返済額も変わりそうですが、すぐに返済額が変わるわけではありません。
変動金利型住宅ローンの返済額の見直しには、5年ルール125%ルールの2つのルールがあるからです。

5年ルール

5年ルールとは
「金利が見直されても5年間は住宅ローンの返済額が変わりません。」という仕組みが5年ルールです。

つまり、5年間は、適用される住宅ローン金利が変更されても、返済額はそのままで、返済額のうちの元金と利息の割合だけが変更されます。

5年ルールでは、住宅ローンの返済を毎月10万円している場合、10万円のうちの利息と元金の割合だけが変わります。
例えば、10万円のうち利息5万円元金5万円だったのが、金利が上昇すると利息6万円元金4万円になるイメージです。

5年ルールでは、毎月一定額の返済をして順調に住宅ローンの元金も減っているものと思っていても、その間に金利が上昇していると実は思ったほど減っていなかったということも起こりえます。

125%ルール

125%ルールとは
125%ルールとは「金利が上昇して返済額が増える場合でも、返済額はそれまでの返済額の125%を限度」とする仕組みです。
例えば、それまで毎月10万円の返済をしていたとすれば、返済額の見直しのタイミングでどれだけ金利が上昇していても、125%ルールが適用になると返済額は「10万円×125%=12万5000円」が上限です。

この5%年ルールと125%ルールという変動金利独特の仕組みで、返済額が急激に上昇するのを防いでいます。
返済額が急上昇することがないのはメリットのように感じるかもしれませんが、いいことばかりではありません。

変動金利型住宅ローンでは未払金が貯まることも

経済情勢の影響で金利が急上昇すると、利息が返済額の上限を超えてしまう場合があります。

例えば毎月10万円の住宅ローンを支払っているとして、金利が急上昇した場合、本当は利息だけで10万5000円支払わなければならなくなることも理屈の上では起こりえます。
しかし、このように利息が返済額を超えてしまった場合でも、5年ルールがあるので次の返済額の見直しまでは毎月の返済額は10万円のままです。

上の例のように返済額を超えてしまった利息の部分は「未払利息」として扱われ、未払利息は毎月溜まっていきます。

また、金利が急上昇して125%ルールが適用になると、毎月10万円の返済をしている場合、本来であれば13万円支払わないと元金が順調に減らないとしても、返済の上限はルールどおり12万5000円に設定されます。

125%ルールが適用になった場合、住宅ローンを支払っているのに元金が思った程減っていないという現実に直面します。

このように5%ルールや125%ルールが適用になると、未払利息が残ったり、元金が順調に減らないということが起こりえます。

変動金利型の住宅ローンで最悪の事態は、金利が上昇して5%ルールや125%ルールが適用になった結果、住宅ローンの最終返済日に未払利息や元金が残ってしまっているケースです。
その場合は、最終返済日に未払利息と元金を一括で返済しなければならないというルールにもなっているのです。

このようなことが変動金利の仕組み上は起こりうるのですが、本当にそのようなことが起こるかは誰にも分かりません。
ただし、将来の経済情勢次第では、そういう怖さがあるのが変動金利の住宅ローンです。

Chouette

決められたとおりに住宅ローンを払ったのに利息や元金が残ってしまうって怖いですね。

住宅ローンの返済は35年もの長きに渡るもの。
そういうリスクがあるということは、一応頭の中に入れておいた方がいいでしょう。

真っ青

まとめ

変動金利と固定金利の住宅ローンの仕組みの違いを説明してきました。

将来の金利がどうなるかは誰にも分からないので、どちらを選ぶのが正解かは借りる時点では誰にも分かりません。
35年経って初めて、どちらを選んだ方が良かったのかが分かります。

ただ、変動金利と固定金利の仕組みやリスクの違いを頭に入れておいて、いざというときはすぐに対応できるようにしておくことは必要です。

どっちにしよう変動金利と固定金利どちらの住宅ローンを選ぶかリスク選好から考える